色彩雑学

色彩雑学|涼しいだけじゃない「夏の白」の魅力。信頼と洗練を生む色の科学

色彩雑学|涼しいだけじゃない「夏の白」の魅力。信頼と洗練を生む色の科学

ふんわりと風に揺れる、軽やかな白いシャツ。
夏の日差しを跳ね返す、潔いほど白いワンピース。 

 

太陽からの日差しが強くなればなるほど、白に心を惹きつけられる気がする。 
夏の白はどの季節よりも、涼やかで凛と美しい。

 

そんなことを思ったことはありませんか? 

 

 

白が凛と美しく見えるのはという季節だけのせいではないのかも。 

 

 

白は、
人間の知覚を変え
感情を静かに整え
清涼感と信頼を纏う 
そんな力がある。

11回目の色彩雑学では心と体を解放するように美しく映える「夏の白」の魅力をお伝えします。






 白は本当に「涼しい色」なのか?


季節感を大切にしていた千利休は、夏になると茶室に白磁や白い布を使っていたと言われています。
白によって涼しさを演出しすると同時に、精神を鎮めることで涼を取る工夫をしていたそうです。 

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白の部屋とオレンジの部屋。
涼しそうに見えるのはどちら?

そう聞かれたら、ほとんどの人が白い部屋と答えると思います。
 

  

色には見た瞬間に温度を感じさせる心理的な力があるのです。 

 

 

この色の感覚はただの感覚だけではなく、科学的にも「反射率」から立証されています。 

白は、すべての太陽光を均等に反射する色。
それと同時に、太陽光に含まれる近赤外領域の光も反射します。 

 

反射されなかった光は吸収されて熱に代わるため、
反射率が高い=熱を持ちにくい
となるので科学的にも涼しい色になるのです。 

この反射率は「明度の高さ」と関係します。
一般的に、明度の高い色は反射率が高く、科学的には「涼しい色」。

色別の熱の反射率と吸収率(目安)

熱の反射率 吸収率
80-95% 5-20%
黄色 60-70% 30-40%
淡グレー 50-65% 35-50%
35-50% 50-65%
30-45% 55-70%
濃紺 10-25% 75-90%
5-10% 90-95%






驚くことに真夏の昼間、白と黒のTシャツを同じ場所に置いたときは表面温度が10度~20度以上も変わるという実験結果があるほど、色によって涼しさが変わるのです。

日常に活きる色の豆知識でも反射率から見るおすすめの日傘を紹介しているので、こちらもぜひお読みください。

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けれど面白いことに、涼しく感じるというのは、この反射率と吸収率の関係だけではありません。
白と深みのある青の部屋。
もしかしたら、青の部屋の方が涼しく感じる人もいるかもしれません。

実際には青や濃紺は白よりも反射率が低いので、白の方が涼しいはずです。
けれど、視覚的には青の方が涼しいと感じることもあるのです。

 

 

「色には、温度計では測れない感情の温度がある」
色彩心理学の世界では、こうした色温感の概念はインテリアやプロダクトの色彩設計に広く応用されています。 







白は信頼と清潔の象徴


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「白はすべての色を含みながら、いっさいの主張をしない。 だからこそ、最も強く、潔い色なのです。」

—— ガブリエル・シャネル(Coco Chanel 

世界的にも有名な、ココ・シャネルはこんな言葉を残しています。

 

白は「無垢」「清らかさ」「信頼」「誠実」の象徴として、 古代から現代まで、社会の中で特別な意味を持つ「色」として存在してきました。

● 古代ローマでは、裁判官や神官が白いトーガを身にまとい、正義と清浄の象徴に 
● 日本の神事では、白装束は「穢れなき存在」の証 
● 医療・衛生の現場では、白衣が「清潔・無菌・信頼性」の代名詞

そして現代のファッションでも、白シャツは「誠実」「洗練」「信頼」の印象を与える戦略色。 
モノトーンコーデでは、白が入ることでコーデ全体が軽やかで洗練された印象に仕上がり、シンプルで飽きがこないため、ミニマリズム志向の人々にも支持される色。

 

白は「無彩色」でありながら、強い存在感があります。
彩が無いはずなのに「モード感」「特別感」「自己表現の強さ」を打ち出す特別な色。

 
ファッションにおいて「白をどう使うか」は、その人の感性やセンスを如実に映し出す鏡なのです。







 パーソナルカラーで見る 
 「夏に似合う白」とは? 


私たちに静かな強さと透明感を与えてくれる白。

無彩色だからこそ、白は一見誰にでも似合いそうに見えて、実は最も繊細な色の一つです。

 

 
モデルのアンミカが言った
「白って200色あるねん」


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この言葉のように純粋無垢な白だからこそ、色が少しでも入ると印象が大きく変わるのが白。
パーソナルカラーにおいても、どんな白を選んでどんな素材を纏うかで印象は大きく変わります。

シーズン 似合う白 印象
Spring アイボリーホワイト 柔らかく陽気、あたたかみ
Summer オフホワイト 涼感・繊細・上品
Autumn オイスターホワイト 落ち着き・深み・ナチュラル
Winter ピュアホワイト シャープ・モダン


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涼しさを感じながら、夏に映える白とのコーディネートは涼しさを感じさせる明度の高さと心理的涼しさをもたらす青系の色。
明度の高さは肌の透明感を引き出しながら、見た目に「涼しさ」と「信頼」を与えてくれる夏におすすめの色。

また、同じ白でも、素材によって感じられる印象は大きく異なるので色と合わせて、素材を選ぶのもポイント。

素材 印象 おすすめの白
リネン・コットン 通気性、ナチュラル アイボリー、エクリュ、オイスターホワイト
シフォン・オーガンジー 軽やか、透明感 オフオワイト、アイスグレー
ポプリン・ブロード かっちり、信頼感 ピュアホワイト、スノーホワイト、パウダーブルー


「白は静寂の色。混じり気のない強さを持ち、空間すら支配する。」
ヨハネス・イッテン(バウハウスの色彩理論家)



イッテンは白を「沈黙と集中の色」として位置づけ、すべての色を引き立てる“究極の背景色”として敬意を払いました。
無垢でありながら、強い意志を秘めた白は、まさに“静けさの中の力”を象徴しています。

 

この哲学を現代の装いに取り入れるなら、鍵となるのは「白+素材+シルエット」の三位一体。
たとえば、
スプリングの人はアイボリーのリネンシャツで風をまとう軽やかさ
サマーはシフォンのオフホワイトワンピースで光を透かす涼感
オータムはオイスターホワイトのコットンTシャツでしっかりとりた深み
ウインターは微光沢あるピュアホワイトのパンツで凛とした存在感

白をベースに素材の質感とシルエットの陰影が加わることで、ただの「無彩色」は「語る白」へと変わります。

 

白はただ“色を選ばない”のではなく、“すべてを受け入れ、調和させる色”。
だからこそ、あなたの個性も、暑い季節の涼感も、美しく引き立ててくれるのです。






 「白」は夏の信頼と自由を纏う 


私たちが夏に白を選ぶのは、ただ「爽やかに見えるから」だけではありません。
白は、色の中でも最も明度が高く、光を多く反射し、見た目に軽やかで涼しげに感じられる色。

  

でも、それだけでは終わらないのが白という色の不思議な力。 

 

 「明るい色は気持ちを明るくする」
という色彩心理の通り、白は
私たちの心の中に風を通し、余計なものを削ぎ落としてくれる
そんな力を持つ色なのです。 

 

だから白を着ると、気持ちまで少し軽やかになる。
身にまとうだけで心に「余白」が生まれる白の感覚は、無彩色の白だからこそ与えてくれる感覚なのです。


この夏は、見た目にも体感的にも涼しさを演出する白を纏って自分らしさを表現してみませんか?

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心に関わるパーソナルカラーの執筆はCLE協会へ

色が人に与える影響は意外にも大きく、
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1980年代に日本へ渡ってきたパーソナルカラーを‘日本の国民性’に合わせたパーソナカラーとして

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