色彩雑学

色彩雑学|秋の装いは”ニュアンスカラー”

色彩雑学|秋の装いは”ニュアンスカラー”

10月だというのに、日中はまだまだ暑さが残る日が続いて「秋」はあるのだろうかそんなふうに感じるけれど、朝夕にふと感じる、冷たく澄んだ空気の匂いで、季節は確実に動いているんだなとそんなことを感じる今日この頃。

秋は、光がやわらいで、夏の鮮やかな色が少し強すぎるそんな風にも感じる。
そんな季節の変わり目に、自然と曖昧さや揺らぎを帯びたニュアンスカラーに惹かれる秋。


なぜ、秋という季節に、ニュアンスカラーに心惹かれるのか。

曖昧で、見るものを全てをまろやかに包み込んでくれるようなニュアンスカラーは、私たちの心や記憶、そして脳にまで語りかける力を持っています。

今回の色彩雑学では、秋の光がもたらす色の秘密から、ニュアンスカラーに心ときめく理由まで、色彩の奥深さを紐解いていきたいと思います。






ニュアンスカラーとは?


eb107db54a6b3e290017532aef36bf05-1759458199.png


ニュアンスカラーとは、単に「薄い色」や「くすんだ色」を指すのではなく、色に繊細な調子や揺らぎを含んだ色合いのこと。

純色にグレーやブラウンを少しだけ加えることで生まれる、柔らかく奥行きのある色。
鮮やかすぎず、はっきりしすぎない曖昧さで、見る人に心地よい「余白」を与えてくれます。


この曖昧な色合いは、人の心と脳にもやさしく働きかけます。
秋は、少し感傷的になったり、どこか寂しい気持ちになったりする季節。
そんな心の揺らぎに、ニュアンスカラーは静かに寄り添ってくれる色なのです。






ニュアンスカラーは
日本ならではの色彩感覚


「ニュアンスカラー」という言葉は、日本独自の感性から生まれた表現。

四季のある日本では、自然から生まれる微妙な色合いを繊細に感じ取る文化があり、灰桜、藍鼠、薄墨色などのような日本の伝統色にも“ニュアンスカラー”が多く見られます。

古くから日本人は、はっきりしない色や曖昧な色合いの中に美を見出してきました。
こうした「微妙な違い」や「雰囲気」を大切にする美意識から、「ニュアンスカラー」という表現が生まれたのです。

4e067fcb634183a84203b9d115dbc0de-1759461525.png

英語でのニュアンスカラーに変わる表現



  • 欧米では、曖昧な色や肌になじむ色を「neutral colors」や「muted colors」と呼びます。
    けれど日本人は、そのはざまにある微妙な色調に目をとめ、「ニュアンスカラー」という独自の言葉で表してきました。
    そこには、曖昧さを美とする、日本ならではの色彩感覚が息づいています。






秋の光は色を柔らかくする


秋になると、地球の傾きと太陽の位置の変化により、日差しは夏よりも低い角度から差し込みます。
光は大気を斜めに通過するので光の散乱が増し、直射光ではなく拡散光が優勢になります。
この拡散光は強い影をつくらず、対象物の色をやわらげ、色の曖昧さや奥行きを視覚的に強調するため、真夏よりも秋の方がニュアンスカラーは深みを増し、自然光の中で調和して見えます。

ec185d68982e518ebc18b545c6dea2c3-1759475097.png

この光の影響により、秋は鮮やかな色彩よりも、グレイッシュベージュ、ダスティローズ、モーブ、カーキといった低彩度で複雑なニュアンスカラーが際立って美しく見えるのです。

 

さらに心理的効果の観点では、秋のやわらかな光とニュアンスカラーの組み合わせは、人の心に安定感と安心感をもたらしてくれるのです。
 
 
高彩度の色が活動性や刺激を引き起こすのに対し、低彩度の曖昧な色は副交感神経を優位にし、リラックスや内省を促すとされています。

ニュアンスカラーは単に情緒のある美しい色というだけでなく、心と脳を柔らかく刺激し、感情の幅を広げてくれる色なのです。






ニュアンス言葉とシーズンイメージ


色の良さは
色は言葉に言葉は色に
変換することでイメージの広がりを持たせることができること。


秋のニュアンスカラーとニュアンスを帯びた言葉は単に季節感を感じさせるだけでなく、温度や光、空気や情緒を含んだ感覚語です。
人の五感を刺激し、色のイメージをさらに深めてくれます。


4a47a0db6e60853dedfcfdf08a5ca249-1759880820.png

Springの秋に使いたいニュアンス語



fb5c81ed3a220004b71069645f112867-1759881626.png

Autumnの秋に使いたいニュアンス語



09dd8c2662b96ce14928333f055c5580-1759881799.png

Summerの秋に使いたいニュアンス語



10fb15c77258a991b0028080a64fb42d-1759881720.png

Winterの秋に使いたいニュアンス語





「色は音楽のようなものだ。目で見る音楽。」 ── ヴァシリー・カンディンスキー


季節は、気温や光の変化とともに心のトーンも変えていきます。
色は感情を動かし、心にメロディを奏でてくれます。


秋のニュアンスカラーとニュアンスのある言葉は、心の中に静かな旋律を響かせる存在。
芸術の秋、装いにひとさじのニュアンスカラーを取り入れて、日常に深みと彩りを添えてみませんか。



f2e749eefb6c5f86e3b651376ad599ca-1716590399.jpg

心に関わるパーソナルカラーの執筆はCLE協会へ

色が人に与える影響は意外にも大きく、
毎日、朝起きてから色を選ぶという「選択」を私たちは無意識に行なっております。

1980年代に日本へ渡ってきたパーソナルカラーを‘日本の国民性’に合わせたパーソナカラーとして

CLE協会は【外見の似合う色と性格傾向の特性】に関するパーソナルカラーを提唱しております。

  • 同質性と異質性の違いによる心理的な色の選び方
  • パーソナルカラーを自己受容へ活用
  • 4つの個性がチームを動かす、パーソナルカラー×チームビルディングについて
  • 自己を見つめる時間、リフレクションとパーソナルカラーの可能性

原稿執筆に関する依頼相談は当協会へお問合せください。色彩学に強い色彩ライターへお任せください。