色彩雑学

色彩雑学|季節が変わると色の表情も変わる

色彩雑学|季節が変わると色の表情も変わる

早いもので11月も中旬。
私は、冷たいけれど、12月のようなせわしさも、1月のような華やかさもない11月の空気感が好き。


一人静かに本をめくる時間。
とりとめもなく動画を見る時間。
季節限定のチョコにわくわくする時間。


気が付けば「好き」に没頭して、静かに自分を見つめられる気がする11月は12か月の中で一番落ち着いているような気がします。


夏の強い日差し
すべてディティールを包み込む
明度を落とすフィルター


真冬の凍てつくような寒さ
光と影の差がもたらす硬質な
コントラストを極端に上げるフィルター


そのどちらでもない11月の空気は、すべての色に対して
薄く彩度を上げ、同時にごくわずかな青みを混ぜる
そんな複雑で微細なフィルターを持っているように感じます。



複雑で、だからこそ魅力的な色の世界。



11月の色彩雑学では季節の空気と光の関係から、「その季節に似合う色」を選ぶことで、人生を豊かに過ごすヒントをお届けします。






色は「物体」ではなく「光の現象」


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私たちが目にしている「色」は、物体そのものが持っているものではありません。



色は、光の波長が反射・吸収
され、私たちの目と脳がそれを感じ取ったときの光の現象


光は太陽から届き、空気を通り抜け、物体に当たると、一部は吸収され、一部は反射されます。
その反射された光の波長を、目が受け取り、脳が「赤」や「青」といった色として解釈するのです。


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光には海の波のような「波長」があります。
波が大きくゆるやかな長波長は赤や橙といった暖色系として、細かく速く揺れる短波長は青や紫などの寒色系として見えます。
つまり、私たちが“赤いリンゴ”と呼ぶその色も、実際にはリンゴが赤の波長を反射し、他の色を吸収しているだけ。
今この瞬間に見ている色は、光が目に届いたその一瞬の出来事なのです。



私たちは「目に見えるもの」を色として定義しているけれど、人が見る「色」は、物についているわけではなく、光がつくりだす現象。


色は常に変わり続ける。
✓ 光の量や角度
✓ 湿度、空気中の微粒子
✓ 時間帯
✓ 自分の心
わずかな環境の違いでもまるで違う色のように見えたり感じたりするのです。



「光が変われば、色も変わる。
だから私は一日のうちに何度も同じ場所を描く。」
印象派画家 / クロード・モネ






日本の四季が生み出す
「光と色の関係」


  • 同じ色でも光の量や角度、湿度や空気中の微粒子によって見え方が変わるということは、季節によっても色の感じ方が変わるということ。

    ▪︎ 春は柔らかく拡散する光に、透明感のあるライトトーンが映える
    ▪︎ 梅雨は湿度を含む光が淡いブルーグレーを纏わせ、ソフトトーンが美しく映る
    ▪︎ 秋は低く乾いた光が深みを与え、ウォームでディープなトーンが調和する。
    ▪︎ 冬は澄み渡る空気が硬質な輝きをつくり、クールなカラーが際立つ

    季節の移ろいを感じながら、トーンを少しずつ変えることで、日々の装いは驚くほど新鮮に映ります。
    光の移ろいに寄り添いながら日々の色を選ぶことは、季節とともに心をしなやかに変えて生きることでもあるのです。

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春の光 ― 柔らかく、にじむ透明感

春は太陽の高度が低く、光が斜めに射します。
空気中の花粉や水蒸気が光を柔らかく散乱させ、全体が白みを帯びた、やわらかいレイリー散乱光に包まれます。
色の輪郭はにじみ、全体が「霞むように」見える
だからこそ春は、ライトトーン・ソフトトーンの色が調和します。
淡いピンクやミルキーなアイボリーが似合う季節。
春の光は、心の輪郭も和らげる優しい光です。


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春の光にあうパーソナルカラー別カラーパレット





夏の光 ― 湿をまとう梅雨と、冴え渡る真夏

夏は梅雨と真夏で空気が変わります。

梅雨の光は湿度が高く、空気中の水滴が光を多方向に散乱させるため、全体が白く、柔らかく包まれます。
ミー散乱によるこの現象は、色の境界をあいまいにし、グレイッシュで透明感のある世界を生みます。
淡いブルーグレーやスモーキーピンクなど、霧に溶けるようなミュートカラーが美しい季節


真夏の光は湿気が下がり、直射日光が強烈になります。
散乱が少なく、光が直進するため、影がくっきりと現れます。
高エネルギーの光が降り注ぐ真夏は、原色やビビッドカラーを美しく見せてくれます。
コバルトブルー、レモンイエロー、シャープなホワイト。
光と影のコントラストが際立つ季節


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夏の光に合うパーソナルカラー別カラーパレット





秋の光 ― 低い太陽が描く、陰影の深み

秋になると太陽の角度が低くなり、光が斜めに差し込みます。
乾いた空気が光を澄ませ、透明度の高いコントラストを生みます。
影は長く、暖色系は一層深く艶やかに見える季節。
テラコッタ、バーガンディ、キャメル。
光と影が織りなす、ディープトーンの調和を感じさせます。
秋の色は、沈黙の中に語る余韻の美


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秋の光に合うパーソナルカラー別カラーパレット





冬の光 ― 凛とした澄明の中の色

冬は大気が乾燥し、太陽光は低角度から差し込みます。
散乱が少なく、波長の純度が高いため、色の透明感が際立つ季節。
雪や氷の反射光が光量を増し、白と青の世界を研ぎ澄ませます。
アイシーブルー、シルバーグレー、スノーホワイト。
冷たくも静謐な光が、クールトーンの美を際立たせます。


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冬の光に合うパーソナルカラー別カラーパレット









「似合う色」とは、光と感性の調和



「色は感情のように、決して一つの形を持たない」
イッセイミヤケ



同じ赤でも、
・春の光では優しくまろやかに
・夏の光ではビビッドに冴える
・秋の光では深く濃く、熟す
・冬の光では凛と強く輝く

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色は、光の環境と人の感情によって見える物を変える。
だからこそ、パーソナルカラーは春夏秋冬という単に似合う色だけの分類ではなく、ウォーム/クール、ライト/ディープ、ソフト/ビビッドといった「色の調子=トーン」でその人に似合うその時々の世界観を作り出すのです。

季節の光が少しずつ変わっていくように、私たちの心もまた日々変化しています。
そのときどきの自分に寄り添う色を選ぶことで、今の自分を心地よく表現する。

自然と共に生きる日本人の感性は、古来より季節の色を纏い、日々を楽しむことを無意識に行ってきました。

パーソナルカラーとは固定された診断結果ではなく、季節の光や心のリズムと響き合う生きた色の感性
色を通して、自分の今を知り、人生の季節を味わう。
それこそが、おしゃれを超えた本当のカラーライフなのです。

パーソナルカラーを知り
色を知って

自分を客観的に見つめる力を育てる。

それは「似合う色」を超えて、自分を大切に扱うための最初の学び
心穏やかに自分を見つめ直せる11月。
色の学びを深めてみませんか?



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心に関わるパーソナルカラーの執筆はCLE協会へ

色が人に与える影響は意外にも大きく、
毎日、朝起きてから色を選ぶという「選択」を私たちは無意識に行なっております。

1980年代に日本へ渡ってきたパーソナルカラーを‘日本の国民性’に合わせたパーソナカラーとして

CLE協会は【外見の似合う色と性格傾向の特性】に関するパーソナルカラーを提唱しております。

  • 同質性と異質性の違いによる心理的な色の選び方
  • パーソナルカラーを自己受容へ活用
  • 4つの個性がチームを動かす、パーソナルカラー×チームビルディングについて
  • 自己を見つめる時間、リフレクションとパーソナルカラーの可能性

原稿執筆に関する依頼相談は当協会へお問合せください。色彩学に強い色彩ライターへお任せください。