色彩雑学
色彩雑学|キレイなのに読めない!? ユニバーサルカラーの必要性と伝わる配色
先日、小学校3年生の息子の学習発表会に参加しました。
この日の発表は、街探検で見つけたことをグループごとにまとめ、発表するというもの。
事前に息子からは、
「何度も話し合って内容を決めたこと」
「PCを使ってスライドを作ったこと」
そんな話を聞いていました。
私が子どもの頃は、3年生でPCを使って発表することなんてなかったな。
今の子どもたちは、自分たちの言葉で考え、形にし、伝える機会を当たり前のように持っている。
その姿に、時代の移り変わりを感じ、少し驚いていました。
学習発表会当日。
どのグループも、写真や文字を工夫しながら、自分たちらしさを大切にした発表をしてくれていました。
その中のひとつの発表。
画面に映し出されたのは、水色の背景に白い文字のスライドでした。
いかにも小学生が好きそうな、爽やかでかわいらしい配色。
一生懸命考えて、時間をかけて作ったことは、事前に息子から聞いて知っていました。
けれど、後ろに立っていた保護者席からは、正直なところ、何が書いてあるのかほとんど読めませんでした。
これはまさに、配色による視認性の問題。
きっと、その日見つけたこと、教えてもらったこと、感じたことを、一生懸命まとめたのだと思います。
写真もきちんと貼られていて、スライドを見せながら話す子どもたちの「伝えたい」気持ちも「一所懸命考えた」ことも伝わってくる。
それなのに、読めない。
すごく、勿体無い。
どれだけ素敵な内容でも、
どれだけ時間をかけて作っても、読めなければ、その努力や想いは届かないことだってある。
そのとき、ふと、色彩検定のUC級のことを思い出しました。
もし先生が、ユニバーサルカラーを知っていて、
「この色だと、後ろからは見えにくいかもしれないね」と一言添えられていたら、子どもたちの努力はもう少し違った形で伝わったのではないかと。
水色×白。
この配色が間違っていたわけではありません。
デザインとして見れば、むしろ爽やかで、上品、きれいな組み合わせ。
水色と白の組み合わせは、お菓子や飲料水などのパッケージでもよく使われています。
ラムネやミント系のお菓子を思い浮かべると、この配色を目にしたことがある方も多いはず。
小学生に人気のキャラクターにも使われていて、とっても親しみやすく、「好き」と感じやすい色のひとつだと思います。
水色には、爽やかさ・清潔感・安心感といった心理効果があり、
白は、純粋さ・シンプルさ・軽やかさを感じさせる色。
この2色が合わさることで、「やさしく」て、「清潔」で、どこか「安心」できる世界観が生まれます。
だからこそ、子どもたちが発表のスライドにこの色を選んだのも、とても自然なことだったのだと思います。
けれど同時に、この水色と白の組み合わせは、
明るい色同士でコントラストが弱くなりやすいという特徴もあります。
つまり、
「印象としては正解」でも、「伝えるための色」としては工夫が必要になる配色なのです。
そして、プレゼンテーションなどのそして実際の場面では、さらにさまざまな条件が重なります。
・教室の広さ
・プロジェクターの明るさ
・見る人との距離
・年齢や視力の違い
・色そのものの明暗差(コントラスト)
こうした条件が重なると、
「きれいな配色」は簡単に『見えない配色』になります。
特に、背景色と文字色の明暗差(コントラスト比)は、視認性を大きく左右する要素。
特に重要なのは、色の違いではなく「明るさの差(輝度差)」が十分にあるかどうかです。
国際的なガイドラインであるWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)では、視認性の最低基準として、以下のようなコントラスト比が推奨されています。
・通常の文字(本文):背景とのコントラスト比 4.5:1 以上
・大きな文字(見出しなど):背景とのコントラスト比 3:1 以上
※この基準は、色覚の多様性だけでなく、視力の低い人や距離のある環境でも読みやすさを確保するための数値。
見た目がきれいでも、このコントラスト比が十分でないと、遠くや光の反射が強い場所では、文字が背景と溶けてしまい、情報として成立しなくなることがあるのです。
ここで大切なのは、
センスがあるかどうかでも、気づかいが足りないでもなく、ただ、知らなかったということ。
知らない、ただそれだけで、伝えたい気持ちはあっても「伝わらない」に変わっていまうのです。
色は、どんな見え方をしていようとも、私たちの感性や脳に働きかける力があります。
だからこそ、ユニバーサルカラーは特定の誰かのためのものではなく、多様な見え方があることを前提に、よりよく伝えるための知識なのだと思います。
水色×白のスライドも、間違いではありませんでした。
ただ、環境や見る人を考える視点が、少し足りなかっただけ。
その「少し」を補うことができるのが、ユニバーサルカラーの学びです。
学校では、PCやタブレットを使った発表が当たり前になり、仕事では、資料やスライドが評価を左右する時代になりました。
ユニバーサルカラーとは、
年齢や視力、色の見え方の違い、環境の違いに関わらず、
誰にとっても情報が正しく伝わるように設計された色使いのことを指します。
UC級で学ぶのは、正解の配色を覚えることではありません。
・なぜ見えにくいのか
・どこを変えれば伝わるのか
・どう説明すれば納得してもらえるのか
感覚や経験に、説明できる軸を与えてくれる学びです。
特に、
・パーソナルカラーを仕事にしている方
・色を使って発信や資料作成をしている方にとっては
欠かせない視点になっていくはずです。
AIが当たり前に使われる時代。
誰でも簡単に、それらしく整ったデザインや配色を作ることができます。
だからこそ私たちが必要なのは
「その色が、本当に相手に伝わるかどうか」まで考えられているかという視点です。
どんなに整ったデザインでも、見る人の環境や見え方を想像できなければ、その情報は届かない。
伝えたい相手への伝えたい情報の配慮は、人だからこそ気づける領域なのだと思います。
色は、本来、きれいで楽しいもの。
そして、感情や脳に働きかけ、自分自身が持っている魅力や可能性を、相手に伝わりやすくしてくれるものです。
だからこそ、ただ「使う」のではなく、「なぜその色を使うのか」を考えることに、意味があります。
その小さな視点の積み重ねが、伝わり方を変え、相手への印象を変え、日常の中の気づきを増やしていく。
それはきっと、AIがあることが当たり前になっていくこれからの時代において、人が持ち続けていく大切な力なのだと思います。
UC級は、人にしかできない視点で「優しさ」を知識として育ててくれる学びです。
あの学習発表会のように、ほんの少しの視点があるだけで、伝わり方は大きく変わります。
4月。
新しい学びを始めるこの季節に、「きれい」から「伝わる」へ。
ユニバーサルカラーを知ることは、色の可能性を狭めることではなく、広げることなのだと思います。
色が人に与える影響は意外にも大きく、
毎日、朝起きてから色を選ぶという「選択」を私たちは無意識に行なっております。
1980年代に日本へ渡ってきたパーソナルカラーを‘日本の国民性’に合わせたパーソナカラーとして
CLE協会は【外見の似合う色と性格傾向の特性】に関するパーソナルカラーを提唱しております。
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